夢 - 水を飲めなくなった男

酷い夢を見た。


ある男が水を飲めなくなった。それは戦争で長期間潜伏せねばならなかったからで、彼は皮に潜伏するにもかかわらず、川の水は飲み水としてはあまりに汚く飲めなかったためでもある。彼は水ほしさから人を襲うようになる。
女が逃げる。川の上で、なぜ手漕ぎボートなのかも、なぜ独りなのかもわからない。同乗していた人間は殺されたのかもしれないし、まさか殺されるとは考えもしなかったのかもしれない。ただ船上で彼女は独り、男から逃げ回っていた。そして彼女を追う兵士の隣には、もう一人男がいた。男は兵士に言う。「生きたかったら、飲め。水が飲めないなら、人の血を飲め」と。男は喉の渇きに耐え切れず、彼女を襲う。男の言葉のままに人を襲う。次々と、何度も何度も。
男は、あるマンションの一室に入っていく。顔なじみなのか、そこに住む女は鍵を開けてしまったのだ。女は男の手にした物に怯え、逃げようとリビングに駆け込む。しかし男は袋小路だということを知っており、また殺し方も熟知していた。
女が怯えた顔で振り向く。男はその額の右に、持っていたナイフの一本を突き立てる。もう一本をその隙間に滑り込ませ、、傷を裂くように広げる。女の左の額も瞬時に、切り開かれる。そして首も。女が目を見開くなか、血が傷から噴出する。「こんな殺し方ってええええええ」女は「こんな殺し方ってないじゃない」とでも男に伝えたかったのかもしれないが、ただ「エェェェェェェェェ……」と口から息を漏らして倒れた。さっくりと切れた傷を見て、男は満足げに笑った。




なんだろう、久しぶりに悪夢らしき悪夢を見た気がする。なんか夢のなかでは、これはドラマの映像で、YOUTUBEに流れている(もしくは削除されてしまった)ものだという。思わず現実にそんなドラマがないか探してしまった。スナッフフィルム(殺人ビデオ)に近いものかもしれない。兵士だとか水を飲めないだとかは完全に後づけで、兵士にアドバイスをした男は、殺し方を教えたかっただけで、男自身が女性を手にかけたのも殺したかっただけだ。兵士はていよく、男がおかした犯行を隠すためのダミーとされたのかもしれない。拍車をかけて気分が悪いのが、男が捕まる様子のないところ。その劇中では女しか殺されないが、特別、女しか狙わないという思想はないようで、平易にいえば無差別殺人だ。もう少し詳しくいえば、無差別"猟奇"殺人である。このドラマは、「悪意のある犯人は必ず捕まり処罰されるものだ」というテーマがあるわけではなく、「この男の満足する猟奇的殺人方法のご紹介」というだけで、まさに殺人にスポットを当てただけのスナッフフィルムに近い。
その男の悪意もさることながら、ラストの女の断末魔がえぐい。簡単にいえば、トータル・リコールでデカいオバさんの顔が割れて、スライドしながらなかで扮装していたシュワちゃんが出てくる――みたいな感じ。切り開かれた傷のせいで頭蓋骨がスライドし、まるで顔全体がひとまわり大きくなったような感じで、カッと目を開いて絶叫する。断末魔と呼ぶに相応しい最期でした。






トータルリコール ― シュワちゃん主演の映画。ある男が妻と平和に暮らしていた。同時期、火星で「記憶を売る」という会社が商品を販売していた。ある日、彼は平和な暮らしが植えつけられた記憶によるものだと気づいてしまい、妻であったはずの彼女は彼を襲う。彼は、記憶を失う前の自分を知る女性と火星で出会い、彼らの敵と戦うのだった――みたいな内容のヤツ。前述のオバさんの顔が割れてシュワちゃんが出てくる場面や、鼻からでっかい追跡機を取り出すシーンが印象的。