小説

ろっじ――ん(キャッイーンみたいに発音)

魯迅の「孔乙己」と「薬」を読了しました。青空文庫よりzip化されたtxtをダウンロードして読みました。 「孔乙己」は、科挙(めちゃくちゃ難しい試験。現在の日本の司法試験より難しかったとかいわれたりいわれなかったり)で人生を棒に振った男を記していま…

青くさくて

TVで「笑う妖精」を見た後、テキトーにザッピングしてたらアニメが放送されてたから流し見していた。大正っぽい雰囲気で、太宰治っぽいなあ、とか、文学っぽいなあ、とか思ってたら、「人間失格」でした。たぶん主要アニメにはならないコアな部類のアニメに…

テイクオフ

1.ホップ 僕の夢は、鳥のように空を飛ぶことだ。 海に程近いこのゲントは、アメリカ最大の造船の町ノーフォークからの煽りで仕事はしおしおだが、その技術は他に引けをとらない。なにより僕のマクガフィン師匠がいるんだから、間違いない。師匠は修繕中の…

物乞い

通勤の駅までの道に、一人のホームレスがいる。乞食然としたいかにも臭そうな身なりで、実際に傍らには桜桃の空の缶詰が口を開けている。妙に落ち着いていて、周囲の人間はあまりその存在にすら気づかないようだったが、物乞いなど当然の如く気持ち悪くて、…

物乞い直後

たった今、久しぶりにBNSKで書いてきたとこさね。 書いてる間は必死だったけど、たった2時間だったみたい。 遅筆はイヤだから丁度いいかもねー。

凍らない水

「――安定した状況で冷やされた水は、凝固点より温度が低くなっても凍ることがありません。これが『過冷却』です」 テレビから流れる声と映像に見入る。研究職を諦めて親父の跡を継いだ俺は、こういった知的番組がヒドく好きだ。 ワシントンのこの田舎に暮ら…

花林糖に思い出ひとつ

雀色時、かりんとうを食む。 冷たい雨が上がり、空気が凍みる。雪と変わるには、そう日を要しないだろう。 窓際には三面鏡、その元には皿に盛られた花林糖。傍らから篤子が膝に擦り寄る。わたしは「こんな話があってね」と呟く。 普段はこんなこと、話さない…

幻を想う

僕はアイドルオタクだ。 けれど、世間でいうようなオタクではない――と思っている。ライブには行ったことがない。イベントはなおのこと。それどころか彼女たちの顔を実際に見たことがない。 テレビや雑誌を通してでしか見たことがない。 つまり僕と彼女たちに…